テレワークについて、今回は労災についてです。
よくあるご質問の中に「テレワーク中の労災はどうなるの?」という質問を受けることがよくあります。
この点ご説明していきます。
「業務災害」と認められるポイント
まず前提として、労災保険の対象となるケガや傷病は、「業務」または「通勤」が原因である場合です。
そのうち「業務災害」と認められるためには、
業務中であったかどうか(業務遂行性)と業務をしていたことが原因かどうか(業務起因性)の2点が重要です。
そして、その判断は次の①②③により異なります。
①使用者の支配・管理下で業務している場合
所定労働時間はもちろんですが残業時間中も含めた勤務時間中にケガをした場合で、基本的にはほぼ業務災害と認められます。
ただし以下の(1)から(4)の場合は勤務時間中に負ったケガであっても業務上とは認められません。
(1)労働者の就業中の私的行為、または業務を逸脱する恣意的行為
(2)労働者の故意的行為
(3)個人的な怨み等による第三者からの暴行等
(4)天災事変
②使用者の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
休憩時間中や始業時刻前や終業時刻後に生じたケガがこれに該当します。
出社後は会社内にいるので、使用者の支配・管理下にはありますが、ケガの原因そのものは業務に従事していない私的行為ですので業務災害とは認められません。
ただしそれが会社内の施設や設備の不備が原因となり生じたケガの場合使用者の管理に責任があると言えるため業務災害と認められる可能性が高くなります。
なお、よく「トイレに行っている時のケガはどうなるのか?」との質問を受けるのですが、生理的行為は業務に付随する行為となるため、①の(1)から(4)に該当しない限りは業務上とみなされます。
③使用者の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
これは出張中や外回り中等に生じたケガが該当します。
会社外で業務に従事している時のケガで、使用者の管理下からは離れていますが、指揮命令を受けて仕事をしているので支配下にはあることになります。
この場合、指揮命令を受けて仕事をしているので、場所がどこであろうと、私的行為などでない限り業務災害と認められます。
以上の点が基本になりますが、在宅勤務中の業務災害はどうなるかというと、考え方としては「就業場所がオフィスから家に変わっただけ」です。
使用者の管理下からは離れているケースが多いものの、指揮命令下にはあるので自宅で負傷した場合であっても業務災害に当たる可能性があります。
そして、業務災害かどうかの判断については、基本的に「業務遂行性」と「業務起因性」により判断することに変わりはありません。
例えば「業務に必要な資料を取ろうとして転倒しケガをした」ように業務時間中に業務に関連する行為で発生した場合には業務災害として認められます。
一方、業務を中断して「息抜きで散歩に行った」「私物の買い物に行った」「子どもが泣き始めたのであやしに行った」ようなときに発生したケガは私的行為にあたり、業務災害とは認められないため注意が必要です。
会社は労働者が自宅で勤務する場合でも安全配慮義務を負うので、以上の点も含め、
①執務スペースの見取り図
②業務日報
この2つの書類は2点は必ず提出してもらうべきです。
労働者がどんな場所で在宅勤務をしているかを把握し必要な指示をしたり、どんな仕事をしたのかを把握することが重要です。
労災の発生リスクや長時間労働リスクを抑えることができます。
長くなってしまいましたが在宅勤務をはじめとしたテレワークはきっと必要に駆られる時期がやってきます。
まずはトライアルとして何人かからやってみることをおすすめします!!